toratoaki’s blog

トラになりたかった男の話です

三好達治『昨日はどこにもありません』

「昨日はどこにもありません」        三好達治
 
  昨日はどこにもありません
  あちらの箪笥の抽出しにも
  こちらの机の抽出しにも
  昨日はどこにもありません
 
  それは昨日の写真でせうか
  そこにあなたの立つてゐる
  そこにあなたの笑つてゐる
  それはきのうの写真でせうか
 
  いいえ昨日はありません
  今日を打つのは今日の時計
  昨日の時計はありません
  今日を打つのは今日の時計
 
  昨日はどこにもありません
  昨日の部屋はありません
  それは今日の窓掛けです
  それは今日のスリッパです
 
  今日悲しいのは今日のこと
  昨日のことではありません
  今日悲しいのは今日のこと
 
  いいえ悲しくありません
  何で悲しいものでせう
  昨日はどこにもありません
  何が悲しいものですか
 
  昨日はどにもありません
  そこにあなたは立つてゐた
  そこにあなたは笑つてゐた
  昨日はどこにもありません
                              三好達治「測量船」より
 
 
急にふと思い出した。
昔見た、原田知世のTVデビュー作品 セーラー服と機関銃
大ヒットした映画『時をかける少女』のちょっと前、まだ髪が長かった時代の知世ちゃんでした。
このTV作品自体は、原作からかなり脚色されていますが、僕的には、同時期の
薬師丸ひろ子主演作よりも好きなドラマでした。
ちゃめっけたっぷりの構成の中に、主人公:星泉(ほしいずみ)の世界観・人生観が凝縮されて独特の”感覚”を持つ作品だった。
 
その話しの中で、
たぶん最終回だったかな、泉がつぶやく詩がこの三好達治の詩である。
 
とてもシティエーションに合っていて、感動した覚えがある。
印象的だった。
悲しかった。
でも、うちひしがれてばかりでない。
明日への希望を持った詩と、僕は解釈した。
 
 
 
詩なんてただの文字の羅列なんだけど、
どれだけ人に感動を与えられるのか・・・
そんな思いで、この詩を聴いていた、あの頃。
 
そして今また蘇るあの感覚、、、
 
それを忘れまいと思う・・・。